臨床薬剤師の使命とは?― ファーマシューティカルケアの視点から考える本当の役割 ―

はじめに:天の声に導かれて

ある日ふと、「臨床薬剤師の使命とは何か?」という言葉が、頭の中に響きました。
それは忙しい日々に流されかけていた私にとって、立ち止まり、問い直すきっかけとなる問いでした。
そして今、私はこう確信しています。
臨床薬剤師の使命とはファーマシューティカルケアの実践に他ならない、と。

目次

ファーマシューティカルケアとは何か?

Pharmaceutical Care(ファーマシューティカルケア)とは、
「患者のQOL(生活の質)を高めることを目的とした薬物療法の提供」です。

この考え方では、薬剤師の役割は単なる「調剤者」ではなく、
患者中心の医療の一員として、責任をもって治療に関与する存在となります。

このケアの本質は、以下の3点に集約されます:

  • 患者の薬物治療に責任を持つ
  • 薬物治療を通じて具体的なアウトカム(効果)を得る
  • その成果が患者の生活の質に寄与していること

使命1:薬を通じて「人」をみる

臨床薬剤師の仕事は、「薬を見ること」で終わってはいけません。
その薬が“誰のため”に、“どんな目的”で使われているのかを見つめることが、臨床薬剤師の使命です。

私は、ファーマシューティカルケアを実践するうえで「患者さんとの対話」と「傾聴」を最も大切にしています。
目の前の患者さんが、何を不安に感じ、何を望んでいるのか。
それに耳を傾けた上で、その人にとって本当にふさわしい薬物療法を一緒に考える姿勢が、薬剤師としての基本だと考えています。

薬歴や検査値だけでなく、患者さんの言葉、表情、生活背景にも目を向ける。
それこそが、ファーマシューティカルケアに基づく関わり方です。

使命2:チーム医療における“責任ある専門家”であること

医師の指示をただ確認するだけの存在では、ケアの担い手とは言えません。
ファーマシューティカルケアでは、薬剤師が治療の成功に責任を持つというスタンスが求められます。

そのためには、

  • 投与設計に積極的に関与すること
  • 有害事象の早期発見・予防に努めること
  • 多職種との対話を怠らないこと

といった、「成果に責任を持つ臨床家」としての行動が不可欠です。

使命3:「見えない価値」を届ける

薬が変わった、処方が追加された——
そういった「目に見える」介入だけが薬剤師の貢献ではありません。

薬が変わらないことを確認することも、
患者が正しく理解し、服用できていることを支えることも、
ファーマシューティカルケアでは重要な“価値”として認められます。

たとえ記録に残らなくても、そこには確かに患者を支える力があります。

使命4:医療の変化を恐れず、進化する専門性を持つ

AI、機械調剤、遠隔服薬指導など、医療の形は日々変わっていきます。
その中で薬剤師が生き残るためには、
「機械では代替できない専門性」を磨き続ける必要があります。

それはすなわち、「患者一人ひとりに合わせたケアを提供する力」であり、
「責任を持ってアウトカムを追いかける姿勢」そのものです。

おわりに:ファーマシューティカルケアが、私たちの軸である

臨床薬剤師の使命とは、「薬を渡すこと」ではありません。
薬を通じて“人を支える”ことこそが、私たちの本質です。

「誰のために、何をしているのか?」
その問いに対して、ファーマシューティカルケアの視点から答えを出せる薬剤師でありたい。

それが、これからの時代における臨床薬剤師の使命なのだと、私は思うのです。

この記事のポイントまとめ

  • ファーマシューティカルケアとは「患者のQOLを高める薬物治療」
  • 臨床薬剤師は、薬だけでなく“人”を見つめる役割を担う
  • 成果に責任を持つ医療者として、チームに関わる
  • 「見えない貢献」こそ、薬剤師の本質的価値
  • 変化の時代においても、専門性と責任で未来を切り拓く
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この記事を書いた人

2007年に地方大学の薬学部を卒業し薬剤師資格を取得。
その後、臨床で活躍できる薬剤師を目指し、臨床コースのある都内の薬学部大学院へ進学。
薬剤師資格を活用して大手チェーンの調剤薬局・ドラッグストアでアルバイトを経験。
大学院では縁あってタイのKhon Kaen Universityへ留学、がん化学療法の研修を1ヶ月間履修。
卒後は都内の大学病院へ就職し、注射、調剤のほかに手術室、ICU、医薬品情報室など数々の業務を担当。
その中で自分の持っている知識をフル活用してがん患者さんに還元したいと思い、がん薬物療法関連の資格を取得し現在に至る。

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