病棟で薬剤師に求められる「本当の役割」とは?
チーム医療の一員として患者さんに寄り添い、医師や看護師と協力して最適な治療を提供することは、薬剤師の当然の役割となっています。しかし実際に病棟に出てみると、「薬剤師はどこまで主体的に動けるのか」「どのようにチームに貢献すればよいのか」と悩む薬剤師や薬学生が多いのが現状です。
私自身も大学院在学中にアメリカのPharm.Dの講義をタイの研修前に受講しました。そこで感じたのは、日本と海外の病棟業務や薬剤師教育の違いです。いわゆる卒後教育、というものですね。その後、タイでがん薬物療法の研修を受け、そこでも臨床薬剤師に求められる役割は、日本とはかなり異なると身をもって体験することが出来ました。
この経験を通じ、「現場で通用する臨床力」とは何かを深く考えるようになりました。
海外の臨床教育から学んだ「生きた臨床力」
タイでの病院研修では、薬剤師が常に病棟に常駐し、医師や看護師と対等に患者の治療計画に関わる姿勢に衝撃を受けました。回診では画像所見を一緒に確認し、治療方針についても薬剤師が積極的に意見を述べます。特に印象的だったのは、薬剤師同士のディスカッションで「その提案のエビデンスは?」と、根拠が常に求められることでした。
タイの研修前に受けたPharm.Dの講義でも、薬剤師が診断や治療に積極的に関わることが当然とされ、学生の頃から根拠を持った意見を伝える訓練が徹底されていることを説明していました。
この背景には、当時の時点で調剤業務が薬剤師以外のテクニシャンなどの方々に任され、薬剤師が臨床判断に専念できる環境が整備されていたことがあります。現在の日本でも調剤業務の機械化やタスク・シフティングが進んでおり、「調剤しかできない薬剤師」は将来的に淘汰されるでしょう。
日本の薬剤師に求められる病棟業務の役割
私が海外の経験を通じて強く感じたことは、「薬剤師の価値は、知識を現場でいかに活かせるか」ということです。
日本では病棟での薬剤管理指導料の算定が広がりつつありますが、薬剤師がただ薬の説明をして終わり、という形式的な対応がまだ残っています。これでは患者さんの信頼を得ることは難しいでしょう。
これからの薬剤師は、患者さんへの服薬指導や副作用対策、生活指導や治療方針にまで踏み込んだコミュニケーション能力、そして医療スタッフに対する根拠ある提案力が求められます。
私が現場で実践する、本物の臨床力
現在私は、病棟や集中治療室(ICU)で薬物療法の管理に従事しています。
現在は主に抗がん剤治療を行う病棟に配属されていることもあり、病棟では抗がん剤治療における副作用管理や治療計画のチーム内でのすり合わせ、患者さんへのわかりやすい説明を心がけています。時により、TDMやスペシャルポピュレーションの患者さんにおける薬物療法の提案も行います。
ICUでは抗菌薬の治療薬物モニタリング(TDM)や腎機能・肝機能に応じた投与設計、鎮静薬の適正使用、注射薬の配合変化への対応など、高度な臨床判断が求められる場面でチーム医療を実践しています。ICUでは、患者さんの病態の変化が早いため、とにかく積極的に薬物療法における提案を行うようにしています。
実際に現場で患者さんのために提案を重ねる中で、臨床力が簡単には身につかないことを痛感します。しかし、患者さんから「わかりやすい説明をありがとう」「あなたと話すことで、薬の不安が減りました」と感謝される瞬間が、この仕事の何よりのやりがいです。
「選ばれる薬剤師」になるために
これからの薬剤師には、知識を現場で使いこなす「本物の臨床力」が求められます。
私自身も毎日の臨床現場で、文献を読み、患者さんの背景を理解し、根拠ある提案を続けながら学びを深めています。
本ブログでは、私の経験を基に臨床で役立つ実践的な知識やヒントを発信していきます。一緒に「現場で選ばれる薬剤師」を目指して、共に成長していきましょう。
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